ひなげしの花
※幸村と丸井
ひなげしの花が咲いた。
この季節にはかならず君のことを思い出す。真っ赤に燃えて、まるでやわらかにくゆる君の髪のようだ。夕焼けの中「じゃあまた明日な」と手を振る君を俺はいつもまぶしいようなきもちで見詰めていた。妙な気恥ずかしさを抱えて、俺たちは手を振り合った。
あの決勝大会で、俺たちは負けた。ひとえに俺のせいだった。けれど俺は泣けなかった。泣くことは出来なかった。皆で紡いできたものがここで崩れた、だから俺は。まさかの敗退に涙する皆に笑顔を向けた俺に、君はそっぽを向いてただ「お疲れ」と呟いた。顔を上げた俺に横顔を向けた君の、そんな不器用なやさしさを好きだと思った。とても好きだと思った。
「ずっと遊んでいられるといいねィ」あのころ、拗ねたような口振りでよくそう言った君の言葉をまねて笑う。永遠に思えたあの日々は昔になった。俺に残ったのは君の住所を書いた薄桃色のノート、ただそれだけだ。少し汚れて黄ばんでしまったこのノートを貰ったときのことを、俺はとてもよく憶えている。
あの日俺の病室を訪れたチームメイトたちはいたづらっぽい笑みを俺に向けた。クスクスと笑った君に困ったような顔をした桑原、こらえきれないように肩をふるわせた赤也、いつもどおりにすました顔をした柳生に「プリッ」と言ってニヤリと笑った仁王、めずらしくほほえんだ蓮二が「さあ」とうながして、いつもより少しだけ頬を染めて、恥ずかしそうに真田が差し出した女の子のような薄桃色のノート。真田は「蓮二がこれが良いと言ったのだ!」と最後まで目を合わせてはくれなかったけれど、チームメイトたちの心遣いが俺にはほんとうに嬉しかった。ひとりずつ書いて貰った彼らの住所は、いまでも消せない俺の宝物だ。なつかしくてパラパラとページを繰ってみる。はじめのほうに笑いに歪んだ君の名前を見つけてたまらなくなって、乾いた声で名前を呼んでみる。「丸井、」いま君はどうしているだろう。
朝、いつものようにたくさんの花たちをトラックに乗せて駅前の花屋まで行く。高校を卒業し、テニスをやめた俺に、花を育てる仕事をしてみないかと声をかけてくれたのはその花屋の店主だった。いつもそこで庭に咲かせる花の種を買っていた俺は別段悩むこともなくその言葉に乗った。趣味だったガーデニングが、今では俺の仕事だ。花を下ろしあいさつをして、トラックに乗り込もうとしたとき、改札の向こうになつかしい背中を見つけた。あの背中は。あの少し曲げられた華奢な背中は、あれは丸井ではないか。鼓動がドッと速まるのを感じた。先ほど下ろしたばかりのひなげしの花を思い出す。あの花のように赤く燃える髪が、春の風にやわらかく揺れている。気付くと俺の足は走り出していた。
「丸井、」切れた息で、下から覗き込むようにそういうと、彼はおどろいたような顔をして俺を見た。「ゆきむらくん・・・?」幸村くんじゃん、そう言って彼は嬉しげに笑った。つられて俺も笑みをこぼす。
「ひさしぶりだな」
「うん、まじひさしぶり。幸村くんはいま何してんの?」
「俺は花を育ててる」
「花?」ふうん、と少し考えるような素振りを見せて彼は、「幸村くん昔から好きだったもんな」と言った。おなじ思い出を共有していることが嬉しくて「うん」と微笑む。
「丸井は何をしてるんだ?」
「俺?俺はケーキとかおかしとか作ってる」それが職場が遠くてさー、毎日こんな時間の電車乗んなきゃいけなくて、もーたまったもんじゃないよ。そう言って、あ、と彼は一枚の名刺を取り出した。
「ここ。もし近く来ることあったら寄って。サービスするし」
ありがとう、そう言う前に、あ、もう電車来るから行くな、と彼は走り出した。またなと叫んだ声に「また」と返して大きく手を振る。赤い髪が人込みに消えていく。見えなくなってもまだ振って、あのころのきもちを思い出した。あのころの俺は恥ずかしくてこうして手を振ることさえ出来なかった。大人になったんだなと、それを嬉しくも淋しくも感じる。
今度会うときはトラックいっぱいに花を積んで行こう。歪んだ文字で書かれた君の住所まで、大きな赤いひなげしの花束を持って。そうして俺たちが過去にしたあのころのことを思い切り語り合おう。その瞬間すらいつか過去になってしまうのなら。あの日隠した君へのきもちを思って、俺はそっと目を閉じた。
Y/U/K/Iのミ/ス・イ/エ/ス/タ/デ/イから。丸井にとくべつなきもちを抱く幸村の話でした。
サイト出来ました~
どろわー→http://drawr.net/onisan-ismine
ひさびさに
バトンでもやってみましょうかね!^ω^
もえちゃんから「指定バトン」 もらった『指定』⇒『テニスの王子様』
まずてにすでまわしてもらえたってことが嬉しすぎる^ω^常にてにすてにすいっててよかった・・・!
1.最近思う『テニスの王子様』
白石はいったいどういうキャラなんだろう
全体でいうと、宍戸がかわいくてしゃあないですもうどんどんいっちゃって!←
2.こんな『テニスの王子様』には感動
テニスをしている!
3.直感的な『テニスの王子様』
ギャグマンガ
4.好きな『テニスの王子様』
きらいなところを探す方がむずかしいです^w^
5.こんな『テニスの王子様』は嫌だ
いや・・・?いやもう公式であそこまでいかれるといやとかいいとかいいようがないです。ぜんぶすきです。
6.この世に『テニスの王子様』がなかったら・・・?
いまのわたしはいないです。
7.次に回す人。(『指定』付きで)5人。
アンカーで^^
つづけてほかのも・・・
+口調バトン+指定されたキャラの口調で質問に答えていくバトンです。
これほんとは宍戸、あほべ、手塚、佐助、土方の五人でまわされてるんですけど、ちょっと多すぎてむずかしいのでいちばんやりやすそうな宍戸くんでいきますね。ほかのひとはごめんなさい。また今度で。
◆誰に回すか5人決めてください(5人)
オフ友でいきます。
ななこちゃん、ひめちゃん、真紗代、Liddellさん、みかとちゃん
◆5人との出会いは?
ななことは部活でだな。一昨年の4月にはじめて会ってー最初は変わった奴だと思ったんだけど俺ひととちがう奴ってのは大好きなんだよな。それで積極的にstk・・まあ関わりを持って、そのうちななこの第一印象とのギャップのでかさに惹かれだして、いまじゃ絶対離せねえ存在なんじゃねえかな。すきだぜ。
ひめとは中1のころだな。もー言葉では言えねえくらいものすんごい美少女がいて驚いたぜ。口ひらいたら宇宙人だったけどな。その宇宙人にこの世界を教えられて結果このざまだ。ま、恨んじゃいねーぜ。むしろ感謝してるくらいだ。俺様に感謝されることなんてめったにねえんだからな。光栄に思えよ。長太郎
真紗代とは小学3年生のころからの付き合いになるな。考えてみると長い付き合いだよな。ほかのやつらとべたべた馴れ合うなんて俺としちゃ出来ねえだろ。あ?べつにクラスに友達がいなかったとかそんなんじゃねえよ。そんなんじゃ・・・まあいいや。そんな俺に声をかけてきたのがTと真紗代だった。真紗代にはたまに怒られたりもしたけどそういう率直なところが俺様はすきだな。
LIDDELLさんとはやっぱり部活だな。尊敬する先輩だ。LIDDELEさんは絵に関してもすげーんだけど、なにより話術がすげーよ。とにかく飽きさせねえ。それでいてこちらの話も聞いてくれるすげえ人だ。あいつなら俺もちゃんと尊敬の念を持って先輩と呼べるぜ。
美角とは中1からの付き合いだな。やわらかい物腰とうらはらに思ったことはしっかり意見するすげー奴だ。そういうとこ、俺かなりすきだな。友達に「ダメだ」っていえる奴って少ないからよ。同い年だが奴のことは尊敬してるぜ。4月から信州に行っちまうからそのまえにもいちど会ってまた話を聞かせてもらいたいぜ。
◆その5人との共通点は?
漫画がすき・・・てとこかな。
◆5人のいいところは?
まとめてはいえねえけど・・・みんなしっかりしてるな。やるべきこときっちりやるっつうか・・・自分の意見ちゃんと言える奴ばっかだから、そこはすげーなって思う。
◆5人は自分のことどう思ってる?
友達・・・じゃねえかな。相手が自分のことどう思ってっかなんて聞いてみねーとわかんねーよ。
◆この5人と今後どうしていきたい?
そりゃ・・・長く付き合えたらしあわせだろ?仲良くしていきたいぜ。
◆5人とは喧嘩したことある?
美角とはあっかな・・・くだんねえことだったけどな。いっつも先に折れんのは俺だったぜ笑
◆指定
こっちもアンカー!ななこはみくしいとかでネタがないときにでも使えばいいんじゃねえかな。まっそんなかんじで。
つづけて携帯バトン
●現在使用中のメアドの意味は?
鈍くて鈍感 もう鬱陶しい後悔してる あーだるだる~ みたいな意味合いでつけました。暗い!^ρ^
●現在の着信音は?
わたしあうもの インディゴの主題歌であります^ω^
●待ち受け画像は?
くぼべ!発信もくぼべ ウェイクアップはししど(アニメ)
●自分の携帯で入力して1番最初に出てきた文字を書こう!
※変なのでてきても正直に書かなきゃいけないよ!
あ:あっ
い:田舎
う:うんこって
え:映画
お:お疲れさま
か:から
き:緊張
く:樟葉
け:けど
こ:このへんで
さ:探しとく
し:してます
す:すさまじい
せ:整理
そ:それでは
た:多分
ち:ちゃんとは
つ:ついてないんで
て:手に入れた
と:とかに
な:なんでね
に:にしか
ぬ:抜け
ね:ね
の:の
は:はりますか
ひ:昼飯
ふ:ふしぎな
へ:返事
ほ:ほんとに
ま:マクド
み:見ると
む:紫
め:芽
も:もしかしたら
や:←
ゆ:友人
よ:よい
ら:らしいけどね
り:りょーかい
る:ると
れ:連絡
ろ:6月
わ:笑
を:を
ん: んじゃ
昨日送ったメールの内容とかがもろに出てる^ω^途中人名入ってたんでそこだけ二番目に訂正しました。ついてないんでって・・・なにが←←
女の子になりたい男の子♪
※ていう歌から生まれました。
※跡部と忍足で女の子になりたい忍足パラレルです。
そいつの”そういうシュミ”をはじめて見たのは夕日に染まる公園だった。赤い空が段々と暗い色につぶされていく、そんなすべてのものが顔を変える時間に、あいつはひとりスカートをはいてくるりくるりと踊っていた。その顔にはいつもはしない化粧がしっかりとほどこされていて、俺はいっしゅん息がとまるような感覚を覚えた。その顔はきれいだった。輝いていた。俺がいままで、見たことがないくらいに。とてもきれいだった。
気づくとそいつはこちらを向いて目を丸くしていた。俺に見られたことに気づいたらしかった。俺は隠れようかとも思ったがいまさら遅い。あいつのほうも隠れたり逃げたりする気はないようだった。ただぼうと突っ立って俺のほうをきつい視線で見つめていた。俺は逃げることをあきらめてそいつの前に姿をあらわした。何も言わないそいつに向かって俺はなんといおうかと思案し、結果「・・・女になりてえの?」といった。奴は「だったら?」といった。俺は「男がすきなのかよ」といった。瞬間、その言葉を後悔した。だって、そんなこと聞いてどうするっていうんだ。どうしようもない。だけど。さっきのこいつのうつくしさを思い出す。あれはきれいだった。とてつもなく。黙っているそいつに俺は畳み掛けるようにこう聞いた。「なあ、じゃあさ、俺ともいけんのか?」最低の言葉だった。
「・・・・・・は?」
「あん?だって男がすきなんだろおまえ。そんな恰好して女がすきなんてわけねえよなあ」
「・・・だから?」
「俺ともヤれるかって聞いてんだよ」
「・・・自分なにゆってんの、」
「あーん?だからよ、」
「そのシュミ、黙っててやっからヤらせろっつってんだよ」
忍足はぱっと目をまるくした。奴のほおにカアッと血がのぼってゆくのがわかった。瞬間、パチンッという音と共に俺は殴られていた。「ばかにせんといて、」赤くほおに血をのぼらせた忍足がいった、「男やったら誰でもええなんて、そんなわけないやろ」学校かばんをひったくるようにとって、ざっざっと去っていく奴を俺はただ土の上に転んだまま見送ることしか出来なかった。
次の日、俺は昨日のことをあやまろうと朝一で忍足の教室へ向かった。教室の扉をがらららと開けて、忍足はいるかといおうとしたそのとき、俺の目に忍足と向日の姿がうつった。忍足はとてもしあわせそうだった。しあわせそうにほほえんでいた。それを見て俺は忍足が向日に恋をしているのだということを悟った。俺は忍足に声をかけぬまま足早にその場を去った。胸のうちに湧き上がる感情がなんなのかわからなかった。ふつふつと、向日なんておまえになんの気もないぜ。という言葉だけが脳裏をよぎった。向日に恋したってムダだぜ忍足。そんなおかしな優越感と溺れそうなほどの絶望感を共に感じた。
その日の放課後、部活を終えて部室に戻ってきた忍足を俺の目は自然にとらえた。そのとなりには向日がいた。忍足は昼間とかわらず、ただ向日がとなりにいることがうれしいと言いたげにわらっていた。俺の胸にまたわけのわからないうずがうずまきはじめた。「おい忍足、」俺は気づくと声をかけていた。「ちょっと、」忍足は俺のほうをちらりと見て、またあとで、というようなことを向日にいった。
「なに」部室の裏、植えられたしげみの中のひとつにもたれて、忍足は面倒臭そうな瞳で俺を見ながらいった。俺はそんなこいつの態度にひりひりとするような感情を覚えながら、そのセリフを口にした。「おまえ、向日のことがすきなんだな」忍足のすました顔があきらかに崩れた。ポーカーフェイスファイターだなんて下手に言えねえんじゃねえかと思えるほどに、その顔はおどろきをあらわしていた。「なんで・・・」「あーん?俺様にわかんねえことなんてねえんだよ」ごくり、と忍足が生唾を飲み込むのがわかった。「なにをして欲しいん」「ものわかりいいじゃねえの。向日にあのこと、しらされたくねえなら、」そこで忍足に胸倉を掴まれた。殴られる、そう思って目を閉じるとくちびるにがっと衝撃があった。「・・・こういうこと、したいんやろ。ええで、すきにしいや」そういって忍足は口元を拭いながら俺をにらんだ。その瞳には夕日がうつりこんで赤く燃えていた。あのときとおなじに、忍足は信じられないほどにきれいだった。
一度いったことは守る、なんて美学がこいつにあるのかどうかはしらないが、それをしているあいだ、忍足は終始おとなしかった。黙って俺に抱かれていた。「俺様を向日だと思ってもいいんだぜ?」というと「岳人はそんな下種なマネせえへん」といった。心がちりちりと揺れて、俺は乱暴に奴の首筋に噛み付いた。ふっとあいつが息を吐いた。
「あんたも、シュミ悪いな」
「お互い様だろ」
「それもそうや」
せやけど、忍足はつづけた。「ぼくはたとえおまえの立場に立ったってこんなマネはせえへん。岳人もや。岳人かて、そら、ぼくの本当のことしったら離れてってまうかもしれへんけど、せやけどこんなことはせえへんで。神かけてや」そこまでひといきにいって忍足はこういった。「跡部、おまえ、最低やな」
夜、俺はひとり天蓋付きベッドの中でふとんを握り締めて昼間のことを反芻していた。最低やな。最低。たしかにそうだ最低だ。けれど俺にはそれ以外の方法が思いつかないのだ。どうしたらいいかわからない。あのときの忍足が消えない。スカートをはいて踊っていた忍足の、あの夕日のうつくしさが消えない。忍足は、昼間学校で見る姿とはまるで別人のように輝いて見えた。夕日を受けてきらきらとしていた。とてもきれいだった。俺はあのときの忍足が欲しい。ただそれだけだ。それだけなのに。俺のしていることは、まちがっているんだろうか。
そのときピンポンと来客をしらせるチャイムがなった。誰かが応対するだろうと俺がふとんにもぐりこんでいると、だだだだっと廊下を走る音がして、ばんっと乱暴に俺の部屋のドアが開いた。「あっとべー!」満面の笑みを浮かべたジローがそこには立っていた。「えへっ今日はあとべといっしょに寝よっかなーと思って来ちゃった!」そういって笑う笑顔は本当に無邪気で、おもわず俺も笑みがこぼれる。「ばーか、それなら先に電話とかしてから来いよ、もう寝てるかもしんねえだろ」「あっそっか、いっけね俺マジマジぜんっぜん思いつかんかった!」「ばーか」ほら、来いよ、とジローをふとんに入れてやって、もぞもぞとふとんに入ってくるジローのくるくるとした頭を見ながら、俺はふとジローに聞いてみようか、と思った。ジローならこういうとき、どうするんだろう。ジローのまっすぐな頭から導き出される答えを聞いてみたかった。いまの俺には、それがいちばん必要なことのような気がした。
「ジロー、おまえ、もしも気になってしょうがないやつがいたらどうする?その、そいつの弱味・・・みたいなものもしってたとしてだ」
「よわみ?」
「あ・・ああまあそんなのをだ」
んー・・とジローはいつもどおりに眠そうな目をぱちりと一度瞬いて、それからこういった。
「俺は、大好きなひとがいちばんしあわせならそれでいいと思う。」よわみとかそーゆーのはむずかしいからよくわかんねーや、そういってジローはこちらを向いてふふと笑った。答えんなった?とやわらかな笑みを浮かべていう。いつだってそうだが、ジローは頭がからっぽなのかとこちらに思わせることが多々あるにもかかわらず、たまに、こいつは全部を見抜いているんじゃないかと思わせる。俺のインサイトなど、まるで敵わないほどに。
「ああ、答えが出た気がする」そういうと、それはよかった、といってジローはまぶたを閉じた。すぐにすーすーと寝息が聞こえ出す。やっぱりこいつには敵わねえな。そう思って俺は部活の奴用の携帯電話に手を伸ばした。
夜中に呼び出したにもかかわらず忍足は何の文句もいわず、俺が指定した場所に先について待っていた。悪い、というとべつに、と返す。冷たい態度だ。あたりまえか、と頭のすみで思う。
「で、何の用」忍足が声まで冷たいままで切り出す。俺は「今は女装してねえんだな」と関係のないことをいった。「あたりまえやん。何、して欲しかったん」「ああ、まあ」「なんで」「あん?まあ・・・すきだから」「女装が?」「ちがうけど」「ならなんやねん」「おまえが」「は?」「おまえがすきだから」ひゅう、と冷たい風が吹いた。俺はなぜか忍足の顔を見れずにうつむいたまま、ただ忍足の指先はいま冷えているんだろうかと考えていた。この冷たい風に冷やされた指先を握りたい。あたためてやりたい。そういうものだと、ジローが教えてくれた。だからいまは。
「・・・本気でゆってるん」
「本気じゃなく冗談でこんなこというやつがいるかよ」
「・・・ぼく、すきなひといる」
「しってる」
「・・じゃあ、」
「おまえがあの公園でひとりでいたとき、俺は、おまえのこときれいだって思った。そのあともずっとだ。ずっと、おまえはきれいだって思ってる。離れていかねえ。心から、おまえのことが離れねえ。今日は、悪かった。ごめん」
「そんなん、急に、言われても・・・」
俺の言葉の途中から涙ぐみだした忍足は、その涙を流すまいと必死の努力をしながら切れ切れにそういった。「わかってる」「いますぐとはいわねえから、」「おまえの整理がついたら」「俺と付き合ってくれ」考えといて。俺はそういった。じゃあ、と忍足に背中を向けて歩き出そうとしたとき、待って、と呼び止められた。振り向くと忍足が、涙で充血した瞳で、「ありがとう」とささやいた。「ああ」と応えて、もう一度、今度こそ俺は忍足に背中を向けて、こんな涙があるんだな、と思った。俺の瞳からも、透明な涙が溢れ出していた。
この話を書くにあたって、オカンとななこちゃんと真紗代氏に多大な協力を得ました。とくに真紗代氏のほうは、彼女のアドバイスでこの話が生まれたといっても過言ではありません。ほんっとにあの話は萌えた!!ほんとは考えてくれたところぜんぶ原文で載せたいところだけど許可とってないのでわたしなりに書いてみました。したらこんな萌えない話になっちゃったっていうね!残念です。←^ω^ 感謝のきもちはまたなにかのかたちで伝えるからね!まってて!>ししん
しあわせというもの
※銀/魂
※山崎と沖田
まわりには数え切れないほどの死体が転がっていた。そこにはひとが生きているときに持っている尊厳だとか、そういうものはまったくないように思えた。その状況を作り出した張本人は、なにもなかったような無表情で俺の隣に立っている。その姿はちまたのひとびとが口々にいうように、まるで夜叉だ。ふだんとなにも変わらぬ心と姿勢で、彼はなんでもないかのようにひとを殺す。切る。切り裂く。
そのことを考えたとき、数えきれないほどの夜をこえて、背負いきれないほどの荷物を抱いて、このひとは今ここにいるんだという、ただそのことが俺の心を狂おしく刺す。平気な顔をしてひとを切るこのひとは、たぶんだれよりも傷ついている。そのことに自分自身ですら気付いていない。彼を支えたいと願うあのひとたちはきっと、彼にこんなことをさせたいだなんてこれっぽっちも思ってやしないけど、彼はあのひとたちのために、こうしたいと望んでいる。まるで堂々巡りだ。いくらくりかえしても答えなんて出やしなくて、ただみんなそれぞれどこかで傷ついてゆく。そんなこのひとたちのためになにか出来たらいいんだろうけど、俺にはそんなことは出来やしなくて、ただこの堂々巡りを見続ける。
「そろそろ行くぜィ、山崎」ふいに彼が声を発して、手に持った刀をすいとふるう。その場に血が飛び散る。頬に飛んだその血がすうと流れていくのをまるで気にしない様子で、彼は刀を鞘に納める。「心配すんな」うつむいてその場にちらかったたくさんの手、足、頭、を眺めながら彼がふ、とつぶやく。俺は心の中を覗かれたような気がして瞬間ぞっとする。はっと彼のほうに顔を向けると、彼はもうこちらを向いていた。血だらけのまま無表情で、「アイスでも食いに行きたいねィ」という。その顔はやっぱりいつもどおりだ。メシを食ったり、昼寝をしたり、猫に餌を与えているときと何も変わらない。山崎ィおごれよ、という彼にいやですよといいながら、俺の先を確かな足取りで歩く彼に、これが彼のしあわせなんだな、となんとなく思う。あのひとたちにとってはこれが。これで。ひとのしあわせを他人がはかるのはむずかしいな、と心の中で思いながら、「ミントンに付き合ってくれるなら」と答えて、俺も彼のあとを追って歩きはじめた。
プロフィール
ぎんたま、ばさら、おおふりを愛しています。テニヌの王子様、デュラララ!!に夢中です。愛、溢れ出ちゃう!
※解離性障害(多重人格・不随意運動ほか)を患っています。そのため更新も一人ではなく数人でおこなうことがあるかもしれません。ご了解下さいませ。
※ここに置いてある小説もどきみたいなんは、特に表記のない場合ぜんぶテニヌの王子様二次です。
※CPに節操はありません!お気をつけ下さい!