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女の子になりたい男の子♪


※ていう歌から生まれました。
※跡部と忍足で女の子になりたい忍足パラレルです。



そいつの”そういうシュミ”をはじめて見たのは夕日に染まる公園だった。赤い空が段々と暗い色につぶされていく、そんなすべてのものが顔を変える時間に、あいつはひとりスカートをはいてくるりくるりと踊っていた。その顔にはいつもはしない化粧がしっかりとほどこされていて、俺はいっしゅん息がとまるような感覚を覚えた。その顔はきれいだった。輝いていた。俺がいままで、見たことがないくらいに。とてもきれいだった。

気づくとそいつはこちらを向いて目を丸くしていた。俺に見られたことに気づいたらしかった。俺は隠れようかとも思ったがいまさら遅い。あいつのほうも隠れたり逃げたりする気はないようだった。ただぼうと突っ立って俺のほうをきつい視線で見つめていた。俺は逃げることをあきらめてそいつの前に姿をあらわした。何も言わないそいつに向かって俺はなんといおうかと思案し、結果「・・・女になりてえの?」といった。奴は「だったら?」といった。俺は「男がすきなのかよ」といった。瞬間、その言葉を後悔した。だって、そんなこと聞いてどうするっていうんだ。どうしようもない。だけど。さっきのこいつのうつくしさを思い出す。あれはきれいだった。とてつもなく。黙っているそいつに俺は畳み掛けるようにこう聞いた。「なあ、じゃあさ、俺ともいけんのか?」最低の言葉だった。

「・・・・・・は?」
「あん?だって男がすきなんだろおまえ。そんな恰好して女がすきなんてわけねえよなあ」
「・・・だから?」
「俺ともヤれるかって聞いてんだよ」
「・・・自分なにゆってんの、」
「あーん?だからよ、」

「そのシュミ、黙っててやっからヤらせろっつってんだよ」

忍足はぱっと目をまるくした。奴のほおにカアッと血がのぼってゆくのがわかった。瞬間、パチンッという音と共に俺は殴られていた。「ばかにせんといて、」赤くほおに血をのぼらせた忍足がいった、「男やったら誰でもええなんて、そんなわけないやろ」学校かばんをひったくるようにとって、ざっざっと去っていく奴を俺はただ土の上に転んだまま見送ることしか出来なかった。



次の日、俺は昨日のことをあやまろうと朝一で忍足の教室へ向かった。教室の扉をがらららと開けて、忍足はいるかといおうとしたそのとき、俺の目に忍足と向日の姿がうつった。忍足はとてもしあわせそうだった。しあわせそうにほほえんでいた。それを見て俺は忍足が向日に恋をしているのだということを悟った。俺は忍足に声をかけぬまま足早にその場を去った。胸のうちに湧き上がる感情がなんなのかわからなかった。ふつふつと、向日なんておまえになんの気もないぜ。という言葉だけが脳裏をよぎった。向日に恋したってムダだぜ忍足。そんなおかしな優越感と溺れそうなほどの絶望感を共に感じた。


その日の放課後、部活を終えて部室に戻ってきた忍足を俺の目は自然にとらえた。そのとなりには向日がいた。忍足は昼間とかわらず、ただ向日がとなりにいることがうれしいと言いたげにわらっていた。俺の胸にまたわけのわからないうずがうずまきはじめた。「おい忍足、」俺は気づくと声をかけていた。「ちょっと、」忍足は俺のほうをちらりと見て、またあとで、というようなことを向日にいった。

「なに」部室の裏、植えられたしげみの中のひとつにもたれて、忍足は面倒臭そうな瞳で俺を見ながらいった。俺はそんなこいつの態度にひりひりとするような感情を覚えながら、そのセリフを口にした。「おまえ、向日のことがすきなんだな」忍足のすました顔があきらかに崩れた。ポーカーフェイスファイターだなんて下手に言えねえんじゃねえかと思えるほどに、その顔はおどろきをあらわしていた。「なんで・・・」「あーん?俺様にわかんねえことなんてねえんだよ」ごくり、と忍足が生唾を飲み込むのがわかった。「なにをして欲しいん」「ものわかりいいじゃねえの。向日にあのこと、しらされたくねえなら、」そこで忍足に胸倉を掴まれた。殴られる、そう思って目を閉じるとくちびるにがっと衝撃があった。「・・・こういうこと、したいんやろ。ええで、すきにしいや」そういって忍足は口元を拭いながら俺をにらんだ。その瞳には夕日がうつりこんで赤く燃えていた。あのときとおなじに、忍足は信じられないほどにきれいだった。


一度いったことは守る、なんて美学がこいつにあるのかどうかはしらないが、それをしているあいだ、忍足は終始おとなしかった。黙って俺に抱かれていた。「俺様を向日だと思ってもいいんだぜ?」というと「岳人はそんな下種なマネせえへん」といった。心がちりちりと揺れて、俺は乱暴に奴の首筋に噛み付いた。ふっとあいつが息を吐いた。
「あんたも、シュミ悪いな」
「お互い様だろ」
「それもそうや」
せやけど、忍足はつづけた。「ぼくはたとえおまえの立場に立ったってこんなマネはせえへん。岳人もや。岳人かて、そら、ぼくの本当のことしったら離れてってまうかもしれへんけど、せやけどこんなことはせえへんで。神かけてや」そこまでひといきにいって忍足はこういった。「跡部、おまえ、最低やな」



夜、俺はひとり天蓋付きベッドの中でふとんを握り締めて昼間のことを反芻していた。最低やな。最低。たしかにそうだ最低だ。けれど俺にはそれ以外の方法が思いつかないのだ。どうしたらいいかわからない。あのときの忍足が消えない。スカートをはいて踊っていた忍足の、あの夕日のうつくしさが消えない。忍足は、昼間学校で見る姿とはまるで別人のように輝いて見えた。夕日を受けてきらきらとしていた。とてもきれいだった。俺はあのときの忍足が欲しい。ただそれだけだ。それだけなのに。俺のしていることは、まちがっているんだろうか。

そのときピンポンと来客をしらせるチャイムがなった。誰かが応対するだろうと俺がふとんにもぐりこんでいると、だだだだっと廊下を走る音がして、ばんっと乱暴に俺の部屋のドアが開いた。「あっとべー!」満面の笑みを浮かべたジローがそこには立っていた。「えへっ今日はあとべといっしょに寝よっかなーと思って来ちゃった!」そういって笑う笑顔は本当に無邪気で、おもわず俺も笑みがこぼれる。「ばーか、それなら先に電話とかしてから来いよ、もう寝てるかもしんねえだろ」「あっそっか、いっけね俺マジマジぜんっぜん思いつかんかった!」「ばーか」ほら、来いよ、とジローをふとんに入れてやって、もぞもぞとふとんに入ってくるジローのくるくるとした頭を見ながら、俺はふとジローに聞いてみようか、と思った。ジローならこういうとき、どうするんだろう。ジローのまっすぐな頭から導き出される答えを聞いてみたかった。いまの俺には、それがいちばん必要なことのような気がした。

「ジロー、おまえ、もしも気になってしょうがないやつがいたらどうする?その、そいつの弱味・・・みたいなものもしってたとしてだ」
「よわみ?」
「あ・・ああまあそんなのをだ」
んー・・とジローはいつもどおりに眠そうな目をぱちりと一度瞬いて、それからこういった。
「俺は、大好きなひとがいちばんしあわせならそれでいいと思う。」よわみとかそーゆーのはむずかしいからよくわかんねーや、そういってジローはこちらを向いてふふと笑った。答えんなった?とやわらかな笑みを浮かべていう。いつだってそうだが、ジローは頭がからっぽなのかとこちらに思わせることが多々あるにもかかわらず、たまに、こいつは全部を見抜いているんじゃないかと思わせる。俺のインサイトなど、まるで敵わないほどに。
「ああ、答えが出た気がする」そういうと、それはよかった、といってジローはまぶたを閉じた。すぐにすーすーと寝息が聞こえ出す。やっぱりこいつには敵わねえな。そう思って俺は部活の奴用の携帯電話に手を伸ばした。



夜中に呼び出したにもかかわらず忍足は何の文句もいわず、俺が指定した場所に先について待っていた。悪い、というとべつに、と返す。冷たい態度だ。あたりまえか、と頭のすみで思う。
「で、何の用」忍足が声まで冷たいままで切り出す。俺は「今は女装してねえんだな」と関係のないことをいった。「あたりまえやん。何、して欲しかったん」「ああ、まあ」「なんで」「あん?まあ・・・すきだから」「女装が?」「ちがうけど」「ならなんやねん」「おまえが」「は?」「おまえがすきだから」ひゅう、と冷たい風が吹いた。俺はなぜか忍足の顔を見れずにうつむいたまま、ただ忍足の指先はいま冷えているんだろうかと考えていた。この冷たい風に冷やされた指先を握りたい。あたためてやりたい。そういうものだと、ジローが教えてくれた。だからいまは。

「・・・本気でゆってるん」
「本気じゃなく冗談でこんなこというやつがいるかよ」
「・・・ぼく、すきなひといる」
「しってる」
「・・じゃあ、」
「おまえがあの公園でひとりでいたとき、俺は、おまえのこときれいだって思った。そのあともずっとだ。ずっと、おまえはきれいだって思ってる。離れていかねえ。心から、おまえのことが離れねえ。今日は、悪かった。ごめん」
「そんなん、急に、言われても・・・」
俺の言葉の途中から涙ぐみだした忍足は、その涙を流すまいと必死の努力をしながら切れ切れにそういった。「わかってる」「いますぐとはいわねえから、」「おまえの整理がついたら」「俺と付き合ってくれ」考えといて。俺はそういった。じゃあ、と忍足に背中を向けて歩き出そうとしたとき、待って、と呼び止められた。振り向くと忍足が、涙で充血した瞳で、「ありがとう」とささやいた。「ああ」と応えて、もう一度、今度こそ俺は忍足に背中を向けて、こんな涙があるんだな、と思った。俺の瞳からも、透明な涙が溢れ出していた。




この話を書くにあたって、オカンとななこちゃんと真紗代氏に多大な協力を得ました。とくに真紗代氏のほうは、彼女のアドバイスでこの話が生まれたといっても過言ではありません。ほんっとにあの話は萌えた!!ほんとは考えてくれたところぜんぶ原文で載せたいところだけど許可とってないのでわたしなりに書いてみました。したらこんな萌えない話になっちゃったっていうね!残念です。←^ω^ 感謝のきもちはまたなにかのかたちで伝えるからね!まってて!>ししん

 

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なんで真紗代氏…?(笑)

  • 真紗代
  • 2010/03/25(Thu)04:22:46
  • 編集
ヤバい…
CP派じゃないんですけど…萌えたッ!
なんかキュンなった(*´ω`*)

凄い本格的…
なんか表現力とか凄いんですけど…
自分が送ったメール読み返して見てめっさ落ち込んだ位に…(笑)

なんかジロちゃんがッ…
ちょっとだけなのにカッケー

そして跡部が…
私の中で阿呆馬鹿ナル変態とかなんか印象あれな跡部がッ…
なんか格好良くなっててビックリ(゚ロ゚ノ)ノ゙

後所々ちょっと私の駄目アイデアが入ってて…
なんか凄く嬉しかったデス(*-v-*)

いやなんとなく・・・笑

  • 芦野
  • 2010/04/05(Mon)23:22:03
  • 編集
萌えたッ?!ほんと?!うれしい!!
真紗代を萌えさせるなんてやったねわたし!!\(^0^)/←←

本格的なんてそんな・・・まだまだですが^^
でもこれでやっと真紗代の元ネタに顔向けできるかな笑
真紗代のお墨付きってことだもんね!\(^0^)/

慈朗は腹黒系でないイイ男になるようにがんばりました。
あとべは・・・あれを恰好良いと言っていいのか?笑 ただのダメ男な気が・・・^^←

またなんかのときには真紗代の萌えネタちょうだいね!
あ、いや、なんにもなくてもちょうだい!わたしがハアハアするから^ρ^

それじゃコメ&読んでくれてありがとうでした!^ω^

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HN:
芦野汎音
性別:
女性
趣味:
絵描く 歌うたう 本読む ネットサ~フィン(^ω^)
自己紹介:
京都在住、おたく どうじんがわたしの生き甲斐!←
ぎんたま、ばさら、おおふりを愛しています。テニヌの王子様、デュラララ!!に夢中です。愛、溢れ出ちゃう!



※解離性障害(多重人格・不随意運動ほか)を患っています。そのため更新も一人ではなく数人でおこなうことがあるかもしれません。ご了解下さいませ。

※ここに置いてある小説もどきみたいなんは、特に表記のない場合ぜんぶテニヌの王子様二次です。

※CPに節操はありません!お気をつけ下さい!

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