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しあわせというもの


※銀/魂
※山崎と沖田



まわりには数え切れないほどの死体が転がっていた。そこにはひとが生きているときに持っている尊厳だとか、そういうものはまったくないように思えた。その状況を作り出した張本人は、なにもなかったような無表情で俺の隣に立っている。その姿はちまたのひとびとが口々にいうように、まるで夜叉だ。ふだんとなにも変わらぬ心と姿勢で、彼はなんでもないかのようにひとを殺す。切る。切り裂く。

そのことを考えたとき、数えきれないほどの夜をこえて、背負いきれないほどの荷物を抱いて、このひとは今ここにいるんだという、ただそのことが俺の心を狂おしく刺す。平気な顔をしてひとを切るこのひとは、たぶんだれよりも傷ついている。そのことに自分自身ですら気付いていない。彼を支えたいと願うあのひとたちはきっと、彼にこんなことをさせたいだなんてこれっぽっちも思ってやしないけど、彼はあのひとたちのために、こうしたいと望んでいる。まるで堂々巡りだ。いくらくりかえしても答えなんて出やしなくて、ただみんなそれぞれどこかで傷ついてゆく。そんなこのひとたちのためになにか出来たらいいんだろうけど、俺にはそんなことは出来やしなくて、ただこの堂々巡りを見続ける。

「そろそろ行くぜィ、山崎」ふいに彼が声を発して、手に持った刀をすいとふるう。その場に血が飛び散る。頬に飛んだその血がすうと流れていくのをまるで気にしない様子で、彼は刀を鞘に納める。「心配すんな」うつむいてその場にちらかったたくさんの手、足、頭、を眺めながら彼がふ、とつぶやく。俺は心の中を覗かれたような気がして瞬間ぞっとする。はっと彼のほうに顔を向けると、彼はもうこちらを向いていた。血だらけのまま無表情で、「アイスでも食いに行きたいねィ」という。その顔はやっぱりいつもどおりだ。メシを食ったり、昼寝をしたり、猫に餌を与えているときと何も変わらない。山崎ィおごれよ、という彼にいやですよといいながら、俺の先を確かな足取りで歩く彼に、これが彼のしあわせなんだな、となんとなく思う。あのひとたちにとってはこれが。これで。ひとのしあわせを他人がはかるのはむずかしいな、と心の中で思いながら、「ミントンに付き合ってくれるなら」と答えて、俺も彼のあとを追って歩きはじめた。

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芦野汎音
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京都在住、おたく どうじんがわたしの生き甲斐!←
ぎんたま、ばさら、おおふりを愛しています。テニヌの王子様、デュラララ!!に夢中です。愛、溢れ出ちゃう!



※解離性障害(多重人格・不随意運動ほか)を患っています。そのため更新も一人ではなく数人でおこなうことがあるかもしれません。ご了解下さいませ。

※ここに置いてある小説もどきみたいなんは、特に表記のない場合ぜんぶテニヌの王子様二次です。

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