二人きりの世界
※恋患いの拡大解釈
※ヤンデレ爆発注意!!
風の強い日だった。
高く遠い空で雲がちぎれるようにして飛んでいる。流れは速く、きっとあの暗い雲は俺たちの元へ「あッ」と言う間に辿りついてしまうんだろうなと俺は思考のすみっこでなんとなく思った。そしてあの雲は雨を降らす。確実に。そんなことをヘンな確信を持って感じながら俺は目の前の奴を眺める。見詰める。奴はどうにも心もとなく思えるひょろいからだで、足で、ふらつくこともなく立っていた。奴は雲のような男だった。あの雲のように、俺の心を不安にさせる。不安を煽る。俺は奴のそんなところがどうにも不思議で仕方がなくて、そして惹かれたのだ。そう、俺は惹かれたのだ、確かに、こいつに。
「…ふうん」
風が奴の前髪をさらった。うつくしく配置された顔立ちが一瞬、あらわになって、隠れた。その顔はたぶん綺麗と呼ぶべきものなのに、俺にはなぜか綺麗に見えない。それはどうしてなのか、いままでずっと考えてきたけれど、未だに答えは出ない。たぶんきっと理由は難しいものではなくて、もっと簡単な、たとえば中身が滲み出しているとか、そんな程度のことなんだろう。そんなふうに思える。実際、奴は性格が捻くれている。
「…ふうん、って。もうちょっとなんかあるだろ」
「なに?」
「なにって。だから、おまえ友達だっただろうが。なんかねーのか、つかあるだろ」
「だからなにが」
「だからこう…あーもういいや。おまえ心当たりない?友達だろ?」
「さよならをわらうにんげんをどうおもう?」
「…へ、」
「さよならをわらう人間をどう思うか、って聞いたんだ」
「…いや、言ってる意味がよくわかんね、つか俺は」
「彼女はしんだ、たぶんね。行方不明だって話だったけど、きっと見つかることはないだろう。だけど俺はね、嬉しいんだ。わかる?彼女がいなくなって嬉しい。彼女がこの世からいなくなって嬉しい。君の世界からいなくなってしまったのが嬉しい。彼女はもう二度と君に声をかけられない君と会話を交わせない手を繋げないキスができない抱き締めあえない愛の証を残せない。俺はそれが嬉しい!とてもね!!俺はさよならをわらうよ、俺は彼女との永遠のお別れが悲しくはないよ、そんな俺を君はどう思うかな?否定するかな?批判するかな?嫌いになるかな?俺はこういうことを言うと君に嫌われるかもしれないと思いながらこういうことを口にしているわけだけれど君は実際どう思った?やっぱり認められないかな?俺は彼女を消したって、君と一緒に居たいんだけど」
「…ちょ、ちょっと待て、話についてけない、えっ、じゃあ、あいつは」
暗い雲は俺の予想通り「あッ」と言う間に俺たちの世界を黒く染め激しい雷と共に雨を降らし出した。野蛮なほどの雨があいつの声をさえぎって、俺たちの関係をまるで蜃気楼みたく曖昧なものにしていく、なのになあなぜ、なぜおまえは笑っているんだ。黒い大きな蝙蝠傘から覗く口元は確かに笑んで俺の不安を煽る。心の奥のやわらかいところに触れる、覗き込む。ああそうだ、俺は、俺はそれでも、だからこそ、
「…おまえ、またやったのか」
「うん」
「何度目だよ」
「さあ…何度目だろ?」
「勘弁しろよ…後片付けとかすんの、誰だかわかってんのかよ」
「わかってるよ」
「最低だなおまえ…」
「君は言えない」
「てめえがいなきゃこんなになんかならなかったんだよ」
「なにそれ告白?」
「…かもねー」
「うれしい」
「やめろきしょくわるい」
「ひっで」
そうだ、俺は酷い男だ。だって俺は、奴が何をしようと、俺のせいで起こす行動ならなんだって許せる。俺は酷い男なんだ。なあ、さっきおまえは俺の世界の話をしたよな。だけどなあ、しらないだろ。俺の世界には、最初からおまえしかいないんだよ。
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プロフィール
ぎんたま、ばさら、おおふりを愛しています。テニヌの王子様、デュラララ!!に夢中です。愛、溢れ出ちゃう!
※解離性障害(多重人格・不随意運動ほか)を患っています。そのため更新も一人ではなく数人でおこなうことがあるかもしれません。ご了解下さいませ。
※ここに置いてある小説もどきみたいなんは、特に表記のない場合ぜんぶテニヌの王子様二次です。
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