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終わりについて


※丸井とジャッカル



終わるな。思ったのは一瞬だった、それはただふとよぎっただけのとりとめのない雑念のひとつだった、だけどそれは確かなことだと本能が告げていた。そしてそれはそのとおりで、女の口から終わりは、まるで始めから決まっていたかのようにするりと零れ落ちた。



 「なーに、ぼーーっとしてんだよ」
こつん、という軽い衝撃とともに聞き慣れた声が聞こえた。上目遣いにその声のほうを眺めると手にスポーツドリンクを持ったジャッカルが、もう片方の手で椅子をひくところだった。「なんでもねーよ」と返してぷう、とガムを膨らます。テニスをするとき、宿題をするとき、ガキの子守りをやっているとき、どんなときでも俺はガムを噛んでいる。つーか噛まねーとまじ調子出ねえ。ガム中毒とかあんのかな、と最近まじで本気で思う。そんな俺にジャッカルは、わかってますよ、みたいなため息をついて、「なんでもねえってことはねえだろ」と言ってきた。俺はもういちどぷう、とガムを膨らます。
「俺がなんでもねえっつったらなんでもねんだよ、いちいちうるさいぜィ、ジャッカル」
「なんでもねえってんならそれでいいけどよ」
そういってすこし困ったように首を傾げたジャッカルは、しかしそれ以上は何も言わず首をゆるりとまわして教室の前にある時計を確認した。1時56分。6時間目が始まるまであと4分弱といったところだ。ジャッカルは次の科目の教科書なんかを机をごそごそ漁って出しながらかばんの中にあるふでばこを探し出した。ひととおり漁って教科書もふでばこも机の上に並べ終わると、ジャッカルはもういちどこちらに向き直った。
「ほんとになんもねえのか?」
ふだんの俺だったら「うるせいっつたろィ?」つって首締め上げてやるところだが、今日はすこしばかり気分が違う。
「ブン太」
名前を呼ばれた。ふ、と眼を上げて俺はジャッカルを見る。「なァ・・・ジャッカルぅ」

「この世に終わりって、あると思うかィ?」

ジャッカルはそのアーモンドみてえな切れ長の眼をすこしばかり見開いた。口唇をすこしひらき、なにか言おうとする。しかしそこで授業開始のチャイムがなった。うちの学校ではふつうのキーンコーンカーンというチャイムのあとに真田副部長の激励が入る。その激励のせいでよけいにきもちが滅入ってくってことを副部長はしらないらしい。ため息をつく。あ、という顔をしたジャッカルが急いで前を向く。丁度教師が教室に入ってきて教壇に上がったところだ。「皆さん揃ってますね、えーでは、今日は教科書67ページから・・・」




放課後。日もとっぷり暮れてあたりはまっくらだ。部活でくたくたの体をつれて部室に入り制服に着替える。ほんとはジャージのまんま帰りてえとこだけど、電車に乗って帰る奴もいるし、そこはやっぱりきちんとしよう、というのが幸村くんの考えで、俺もそれはそうだと思うのでちゃんと毎日部活のあとには制服に着替える。汗だくの体をタオルでがしがしと拭いて、白いシャツに腕を通す。そうして俺が慌しくロッカーを開けたり閉めたりしながら着替えていると、となりに誰かがふっと立った。下校時刻近いぜィ、早く着替えろよ、と言おうと上を向くと、そいつはロッカーを見詰めたままで「なあ、昼間の話のつづきだけどよ」と言った。ああ、と応えて「終わりの話?」と聞くと、ひとつ頷いてああ、とジャッカルは答えた。俺はすこし笑って見せながら、
「あーもうそれはいいぜィ、終わったことだし。つか、まあ、なんつーかまあ、なんで終わりとか、つか何をもってして終わりっつうのかなとか、そゆこと、ちょっと思っただけだし。気にすんなィ」
「別れたのか」
俺はジャッカルをまじまじと見る。ジャッカルは真摯な、それこそテニスの試合中にしか見れないような真摯な顔で、俺を見ていた。はあ、とおおげさにため息をつく。ジャッカルはなぜかすごく勘がするどい。特にそれはこういうときに限って発揮されて、俺はそのたびにあなどれないな、と思う。

「まあねィ。なんか突然、別れましょうってさ」「それで」「そんで、まあ、あー終わるってゆうのはこんなかんじなんかなって思って、でも終わりってなんなんだろって、たとえば俺とジャッカルの関係の終わりっつうのはあんのかなって、ほら、始まりがあるから終わりがあるとか言うだろィ、だから、始まんなきゃいいのかなって思ってでもはじまりってどこかわかんないわけで、始まっても終わらない関係もあるんじゃないかとかそういう、そういうことをさ、思ったりとか、」はっ、と息をつく。自分でも何を言ってるんだかさっぱりわからない、けれどジャッカルはなぜか最初とおなじすごく真摯な瞳で俺を見ていた。その瞳にうつっている自分を見ていたらなぜだか涙が溢れてきて、あれ、と俺はひそやかに脳のすみっこで驚く。気付けば部室には誰もいなくて、俺とジャッカルのふたりだけで、そして俺はジャッカルと見つめあいながらなぜか泣いている。そうだ、昨日彼女に終わりを告げられたとき、終わるなと直感して、それで、だけど、もしいつかジャッカルとこういうふうに、終わりを予感するときが来たら、それなら俺は始めたくないと、終わりたくないと、そんなことを考えて、それで今日は1日ブルーだったんだ、ガムなんかではごまかせないくらい。

なぜか止まらない涙を止めようと何度もまばたきをしたり手でこすったりしていたら、どん、と全身に衝撃がきた。「終わらない」耳元でジャッカルの声がする。ああ、いま俺、ジャッカルに抱き締められてんだ、とマヒした脳のどっかで思った。つづけてジャッカルは言う、「終わりなんてない、もしあったとしても終わらせない、」俺とおまえだけは。ジャッカルの声が鼓膜に直に響いてきて、ぼうとした頭の中でその言葉だけがめぐって、俺は気付けば笑っていた。あは、うははは、ははは、は。ぐい、と体を引き離してハゲ頭を両手で包み込んで、俺は泣いて笑いながら、「バカだろ」といった。ジャッカルは、自分まで充血して潤んだ眼をして、「お互いさまだ」といった。その声がちょっぴり揺れて聞こえて笑い声が止まらなくなる。

「なあ、今日手ェつないで帰ろうぜ」
「バカ言うな。おまえそれ手つなぐとか言って全体重俺に預ける気だろわかってるぜ」
「ハハ、さっすがジャッカル」
「なにがさすがだよ嬉しくねぇよ」
いつのまにか俺の涙は止まっていて、フフ、ハハハハ、と笑いは止まらないまま、ただ目の前のジャッカルを見つめながら、昨日の彼女の言葉を思い出した。『丸井くんにはもっといいひとがいると思うよ』。そうだなそのとおりだ。彼女の言ったことは当たってた、彼女はいい女だった、だけど俺には。
「おーいーおまえ手ェ止まってんぞ。ひとつのことしか出来ないそのクセ、いい加減克服しろよなー」俺のパンツまで勝手にしまってくれちゃってるジャッカルを見ながら、心のすみでひっそり思う。「だって俺が出来なくたってやってくれるだろィ?ジャッカルが」にやりと笑いながらそういうと、ジャッカルもこちらを見て笑った。「まあな」



俺はもう、終わりなんか怖くない。





ひさびさでなぜこのCP。というか付き合っているのか。付き合っているのかこのふたりは。そして丸井のキャラはこんなで合っているのか。電波になっちゃったけどこんなんでOKなのか。なんだか書いてる本人もよくわかんなくなってきてますがとりあえずおひさしぶりです。最近生活のほうはだいぶ落ち着いてきました。自分自身も、コントロール出来ないなりになんとかなってます。またちょくちょく上がってきたいと思うので、そのときはどうぞよろしくお願いします!!おやすみなさい^ω^ノ

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芦野汎音
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自己紹介:
京都在住、おたく どうじんがわたしの生き甲斐!←
ぎんたま、ばさら、おおふりを愛しています。テニヌの王子様、デュラララ!!に夢中です。愛、溢れ出ちゃう!



※解離性障害(多重人格・不随意運動ほか)を患っています。そのため更新も一人ではなく数人でおこなうことがあるかもしれません。ご了解下さいませ。

※ここに置いてある小説もどきみたいなんは、特に表記のない場合ぜんぶテニヌの王子様二次です。

※CPに節操はありません!お気をつけ下さい!

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