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HELP MY GOD!


※ふゆちゃん夢主でドリーミング
※と見せかけてあとしし
※色々適当かるくパラレル



ひとめ見たしゅんかん、きづいたんだ。運命の相手はきっとあらわれる、そんなおとぎ話信じてたわけじゃないけれど。かみさま、かみさま、これが恋ってやつなんですか?



しつ、れん。失恋失恋失恋。恋を失うと書いて、しつれん。ああちくしょう!これで何度目だよ!俺の短い十数年の人生で恋に破れたのはもうかれこれ8度目だ。運命はいつもうそをつく。俺の繊細なハートはボロボロだ。しかも毎回毎回ぜーんぶ「ごめんね、跡部君が好きなの」。ちくしょう!俺の心もぎざぎざハートになるっつー話だ。跡部跡部って、アイツなんかのどこがいんだよ!そう怒鳴って部室の壁を思い切り殴ると腕がジンとした。しかも隣から「うるさいで宍戸。静かにしいや」と眼鏡の声が飛んでくる。ちくしょう。あまりのくやしさに涙が出そうだ。なんでいっつも、あいつなんかに。


「おまえらナニ騒いでんだ、アーン?」
おまけにタイミング悪く、いつもどおりに偉そうに、我等がアトベサマが樺地に扉を開けさせて入ってくる。今日も自慢のそのお美顔はうるわしくもかがやいているようだ。ああちくしょう。この心の底に溜まった鬱憤をすべて込めて思い切りにらみつけてやる。ぎりりり。歯軋りもセットで。するとわがうるわしのアトベサマはその色めかしくもきよらかなおホクロのあるお美顔をこちらに向け、「なんだ、またかよ宍戸、今度は誰に振られたんだ?アーン?」なんて言いやがった。ちくしょう!自分は振られたことねえからって余裕ぶっこきやがって!さっき振られたことも英語の時間爆睡して廊下に立たされたことも朝練でガットが切れたことも学校に来るとき靴紐がほどけて転んだことも、ぜーんぶ跡部のせいなような気がしてくる。ああちくしょう!腹立つ!ちくしょうちくしょうちくしょう!「・・・ふゆちゃんだよ」


「ふゆ?」
跡部はその切れ長の瞳を少しだけ見開いてこういった。
「ふゆって、あのふゆかよ?」
「・・・?・・・そうだよ」
「おまえあいつに告ったのか?」
「悪いか!」
「ばかじゃねえの?」
「アァ?!」
「あいつおまえの弟に夢中だろうが」
「・・・は?」
「だから、あいつ亮に夢中だろ?」
「・・・・・・はい?」
「アン?おまえ頭大丈夫?耳ちゃんと聞こえてるか?失恋のショックでばかになっちまったんじゃねえの・・・あ、元からか」
「うるせえ!」
ちょっと待てちょっと待てちょっと待てよ。弟が好き?はあ?どういうことだ。ふゆちゃんはたしかに「あとべがすき」って・・・あれ?あとべきらい、だったか?そういえばそれを聞いたから思わずノリで告っちまったような?あれ?あれ?あれ?

「はァ・・・ったく、頭が悪いってのはかわいそうな話だよな。人の話を理解することすら出来なくてよ。大体おまえ、ふゆは前から亮と付き合ってんだろが。ナニ人のカノジョに告ってんだよおまえしかも弟って・・・なんだ。庶民の間で流行ってるっていう昼ドラへのあこがれか?」
「流行ってねーよ!」
っていうか、はい?ナニ?ふゆちゃんと亮って付き合ってたの?それっていつから?ていうかまじで?え?俺しらないんですけどちょっと待って、じゃあ俺おとーとのカノジョにコクハクしちまったっつーことでそれって・・・え?俺激ダサじゃねえ?なにやってんの、俺?

カアア、と体が熱くなる。顔も火照って火を吹きそうだ。きっと今俺の顔はユデダコみてーに赤いに違いない。いますぐここから消えたい。そのまえに跡部の向こうでにやにやきもい笑顔を浮かべてる眼鏡を消したい。ああちくしょう、ちくしょう、ちくしょう。跡部の青い瞳が俺を見詰めてる。
「ひょっとしておまえ、あいつらが付き合ってんのしらなかったのか?」
答えられない。弟が付き合ってんのをしらなかったなんて、ましてやそのコイビトを好きになっちまってたなんて、言えるはずがない。激ダサすぎる。超激ダサ。信じられねえ。
目の前の跡部が、そんな俺を見て、ふ、は、と笑い出す。フフフフハハハハハファーハッハッハッハッハッハ!といつもどおりの高笑いだ。こいつまじ殴ってやろうかな、その自慢の顔ごと消し去ってやろうかな、と思ったとき。跡部は笑いすぎて滲んだ涙をぬぐってこう言った。「ハハ、なら宍戸、俺にしとけよ」


「・・・」
「・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・、・・・、・・・はい?」
「遅えよバカ」
「いや。いやいやいやバカはおまえだろ?ナニをお言いになってらっしゃるんですか我らが氷帝のキングさまは?」
「アン?だから俺にしとけって」
「いや意味がわからねえ」
「バカはかわいそうだな」
「関係ねえよ!」
「俺と付き合えってことだよ」
あまりにもふつうの温度で跡部は言う。跡部は言う。跡部は言う。



「俺にしとけよ」なんて、「付き合いたい」だなんて、ふざけんな!と言いたい。いいかげんにしろ!と言いたい。言いたい。言いたいのに。なんか立派に踊らされてる気がするのは気のせい?おまえなんかじゃ役不足だよ!なんて、ああもう、かみさま!運命は二度はうそをつかない、なんて。戯言か?あいつの微笑んだ青い瞳にうつる俺がどんどん近くなっていく。そして。





「ていうかなあ・・・そういうラブコメは外でやってや」
「!!! う、あああああああああああああああああああああ!!!!!!」
突然聞こえた眼鏡の声に我を取り戻し、目の前のしろい顔をぶん殴って駆け出す。「ぶぐあッ!」とかなんとか尋常でない音が聞こえたような気がするが気にしない。跡部の野郎、ちくしょう、顔が熱い。「あれ?どうしたんですか?ししどさん?」なんて、どっかで犬の声が聞こえたような気もするが気にしない。「あの野郎・・・ッ!」ちいさくつぶやく。「俺のファーストキス・・・!」


「覚えてろよ!!!」走る俺の耳の奥で、たしかにちいさく、ベルの音が聞こえた。




というわけでふゆちゃんお誕生日おめでとうございまっす!!!そして扱い酷いけどおしたりも明日のお誕生日おめでとうございます!!お誕生祝いがこんなあほ話でごめん・・・BLの王道的展開に夢を絡ませてみようとがんばりました。そして挫折しました。がくりorz もっとふゆちゃんとししどを絡ませたかったなあ・・・また来年リベンジ!する!ぜったい!ということでゆるしてやってください^^^^ ほんまにお誕生日おめでとううう!わたしも同い年になりたいよ!← 31日楽しみにしてますね!では今日はあんまし時間がないのでまた改めて^^手ブロにコメありがとございました!きよもえ・・・^^^^^^

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夏の幻


※おしたりとししど



あああちくしょう。やってらんねーぜ!心の中で叫んで俺は机に突っ伏す。頬をつけた机はむっとした夏特有の暑い空気とは裏腹にひんやりと冷たい。ああちくしょう。目の前に広げられた何枚もの白いプリントは一向に埋まってくれない。夏休みだから、とかいう訳のわからない理由でエアコンのつけられない教室の暑さが俺を余計に苛立たせる。ああ、ちくしょう、ちくしょう。

「ししどー早よせな部活終わってまうでー」
頭上から涼しげな声が降ってきた。んなことわかってんだよ、と言ってむくりと起き上がる。ししどってつむじ左巻きやな。めずらしない?のんびりとしたその声に俺の心はさらに苛立つ。俺の前の席にその細長い体を持て余すように座った忍足は眼鏡の奥の瞳をゆるゆると窓のほうへ向けた。四角く開いた窓からはグラウンドで部活に勤しむやつらの声が聞こえる。思わず「部活してぇ」とつぶやくと、「ほな早う課題終わらさんとな」とさらりと言われた。むかつく。


「せやけど赤点取ってまうとか、ほんまししどやわー」
「どういう意味だよ」
「いやいやそのまんまの意味やで」しれっと言ってくる奴に凄んでみせると笑われた。どうせおまえらみたいに出来よくねえよ。やさぐれた気持ちで不貞腐れて言う。あーあ。今頃長太郎もあの中でテニスしてんのかな。俺がこんな糞つまらねえ課題やらされてるってのにあの野郎。まじ生意気。今度練習出たときに前より上手くなってなかったらしばく。ごめんなさいぃぃ~と泣きながら謝る奴を想像すると少し気持ちがせいせいした。にやりと笑うと「うっわ悪い顔」と忍足が言う。うっせえ、とその頭をプリントでしばく。「ひっど」とつぶやいて奴は俺を上目遣いに見る。眼鏡の奥のまつげが長くてきもい。そう伝えると「ひっど!ひっどぉ!ぼくせっかく部活休んでししどなんかの補習に付き合ったっとんのに!何なんその言い草、ひっどぉ!」ときゃあきゃあ喚き出した。女子かよ。浮かんだ言葉は心にしまって、あーはいはいさんきゅ、適当に礼を言っておく。「ひど」もういちど言って忍足は俺の手付かずのプリントを取って三角に折り出す。「なにしてんの」聞くと「紙飛行機」と返って来た。ばかじゃねえの。「ばかちゃうわアホ」その言葉に大袈裟にため息をついて椅子にもたれる。

「大体よー」体でバランスをとって椅子をぐらぐらさせながら、必死に折り紙をしている忍足に言う。「んー」と手元を見たままよくわからない返事を返してくる忍足に構わず俺は言葉をつづける。
「こんな課題とかよ、やっても意味ねえと思わねえ?」
「いや意味なくはないんちゃう?やったら出来るようんなるやん」
「いや意味ねえよだって俺これ全然わかんねえし」
「それはししどが授業中ちゃんとセンセの話聞いてへんのが悪い」
「うるせえな」
ごん、と忍足の足を蹴ると「痛!」と悲鳴を上げた。つくづく女子のよーだ。これがモテるのがわからねえ。なんでだ。最近流行の草食系男子か?やっぱ男は肉食系だろ。そう言うと「そないなこと言うてるから宍戸やねんで」と憐れむように言われた。なんでんなこと言われねーといけねーんだよ!ともういちど奴の足をごん、と蹴る。痛!とさっきとおなじように短く叫んで、やからモテへんねん、この乱暴者。と忍足が言う。

「せやけど」さっきと同じように忍足が切り出す。「モテるかどうかはともかくとして、とりあえずはこの課題さっさと終わらさな部活出られへんで」とうとう最後の大詰めにかかったらしい紙飛行機をせっせと折りながら忍足は言う。なら教えるとか手伝うとかなんかしろよ。そう言うと「アホ。ししどがやる気なさそーやからぼくはどーでもいい紙飛行機なんか折ってんねやろ。おまえが早よなんかやらんかいな」と言って来た。紙飛行機はどうでもよかったのかよ。突っ込んでぐらりと椅子を前に戻す。衝撃で机に腹が当たる。痛い。そんな俺を見て忍足が薄く笑う。その様子が酷く楽しげで腹が立つ。


「出来た!」
「あー?」突っ伏した机から顔を上げて忍足を見ると、その手には白くて大きな紙飛行機がのっていた。おぉーと言いながらぱちぱちと拍手をすると、ふふん、と自慢げに笑い鼻の下をこすって、忍足は紙飛行機をそっと大事そうに手にのせたまま椅子から立ち上がった。そろそろと神経質な足取りで窓際へ向かう。

「なあししど」
四角く切り取られた窓の向こう、青い青い空をバックに忍足はこちらを振り返る。急に吹いた風にさらりと髪をなびかせふわりと笑む。その手からすう、と空に向けて紙飛行機が飛び立つ。白い白いその姿は青い青い空を駆け抜けて高く高く飛び、俺の視界からまたすうと消えた。
「紙飛行機でも飛行機雲描けたらなあて思わへん?」
俺はぼんやりと紙飛行機の消えた空の向こうを眺めながら「考えたこともねえよ」と言葉を返した。「ぼくはいっつも思うねん」窓際に手を掛け、おなじように窓の向こうを眺めながら忍足は言った。さあ、と吹いた風に忍足の黒い髪が煽られてなびき、俺からはその表情が見えなくなる。

「飛んだ跡が雲になったらめっちゃ素敵やん」そう言って振り返った奴がとてもおだやかな顔をしていたので、俺も何故だかそれがとても素敵なことのような気がして、「そうだな」と言った。それを聞いて奴がふふふと笑う。俺も笑い返しながら、ふと視線を空に向けると、白い白いまっすぐな線が、青い空を切り裂くように流れていた。



さーて皆様お手を拝借。よろしいですか。ではせーので!せーの!おししし!!おししし!!いやまあそれっぽいことひとつもしてないですけどね^^でもわたしはおしたりとししどがふたりっきりの時間を持っているだけで萌えれるのでそれでよしとします。自画自賛自己満足!\(^0^)/ところでおしししってマイナーCPなんでしょうか?ていうかどの程度だとマイナー?わたしはあとししはマイナーじゃないメジャーどころだと信じている人間なんですが果たして・・・

あっこれはI美さんに頂いた「勉強を教え合う少年共」をイメージしながら書きました!え?全然教え合ってない?なんのことかな?^▽^ I美さん、ありがとうございました!



追記:最初に上げた小説のオチがどーも気に入らなかったので修正入れました。



さらに追記:タイトルはガーネットクロウの同曲から。内容に特に繋がりはありません。飛行機雲と聞くとかならず思い出してしまうんですよね・・・あああバーロー懐かしいな・・・^^^^

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僕の彼女を紹介します


※鳳と宍戸



「愛してるっす」

奴はそう言ってこちらを見た。背の高い奴がこちらを見ると、どうしても俺は見下ろされている恰好になる。夕日を受けた奴の顔は、そのせいだけではなく赤く見えた。
「・・・えーと」
「愛してるっす」
もうからだじゅうあつくてあつくてあつくてしにそうなくらい。愛してるっすまじで。奴はそんな、頭とろけてんじゃねえの病院行けば、と言いたくなるようなセリフを見たこともない真剣さで俺の瞳を見詰めながら言った。奴の瞳は子犬の目だ。黒目がちでまっすぐにうるんでいる。俺はこの瞳にとても弱かった。

「宍戸さん、愛してます。愛して「いやもうそれはわかったから、うん、ちょっとまって。落ち着いて」「おれは落ち着いてます」落ち着いてないのは宍戸さんのほうでしょ。そう言って奴はまたまっすぐに俺を見詰めてくる。ああもう。だから。やめろよ。その目。おかしくなるよ。いや、もうおかしいのか。この状況に目の前のこいつ、ついでに今ここで「愛してる」なんてぶっとんだ告白を聞いている俺も。

「・・・あのさあ。おまえさ。それ本気なわけ」
「まじもまじ大まじです」
「・・・古くね?」
「古くありませんおれのきもちはいつでも新鮮です」
「・・・ああ、そ」

「宍戸さん」
「・・・なによ」
「愛してます」
「・・・もーわかった」
ああ。だからその目をするなっての。その目で俺を見んじゃねえよ。おかしくなんだろ。おまえがその目をすると俺まで変なこと口走りそうになんだよ。だからやめろよ。ああもう。だから。
「・・・もーいいよ」
「・・・はい?」

「すきにしろ、ばか」
「・・・!ししどさ・・・!」
「うざい」
「っ・・・ありがとうございます!」
愛してるっす、ともういちど言いながら奴は俺にかぶさってくる。おいおい、おまえでかいんだから勘弁しろよ。潰れるって。押し潰されるって。そんなことを思いつつ、奴の異様なまでに嬉しそうな顔を見ていたら、まあでも、もうなんでもいいかな、などと思ってしまって、そんな自分に俺はためいきをつく。

「宍戸さん」
「なんだよ」
「しあわせにしますから」
「バカ、当たり前なんだよ!」
言いながら軽く首を絞めると、奴はあははと笑いながらもういちど、しあわせにします、宍戸さん、と言った。その顔があまりにしあわせそうで、俺は体の奥のほうからカァと熱がこみ上げてくるのを感じる。


「おまえ、すげーよ」
そして俺はつぶやく。おまえ、すげーよ。だって、だっておまえ、俺はノーマルだったんだぜ。のはずだったんだぜ。なのにまんまとおまえと付き合うことになっちまってる。すげーよ、この俺を丸め込むなんてさ。この責任はかるくはないぜ。しあわせにするなんて、そんなの当たり前だ。そんなぬりーことで終わると思うなよ。覚悟してろ。俺に付き合わせるってことは、それくらいの覚悟はあんだろ?

「? なにがですか?」なんて言いながらふしぎそうに俺のほうを見る奴に、「ばーか」と頭突きを喰らわせて、俺はふっと笑った。
「行くぜ、ちょうたろう」
痛いですよ何するんですかぁなどと涙混じりにつぶやきながら「はい、宍戸さん」と奴が返事をする。

今日からこいつが、俺の恋人だ。



あほみたいにあほなはなしを書きたかった。それだけ。いやも~らぶらぶですね。スクエアを見る限りししどさんはもっと格好良くて男前なんじゃないかと思いますがケンケンの演じてるししどはたぶんこんなかんじじゃないかと思ったので。とりあえず、とりししは王道!!突き進めよ!\^○^/


追記:芦野の好きCPはあとべ×ししどですあしからず

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そして俺はまたさよならをする


※跡部と宍戸(と鳳)
※引き篭る宍戸の話 最終話 宍戸視点です。



夕日。あいつ。踏み切り。校舎。またな。さよなら。
あの日あの場所あの言葉が、俺の頭をぐるぐる回る。幾
度繰り返したところであいつはもう帰って来ない。そんなこと疾うにわかっているはずなのに、同じところを巡り続けて俺はいつまでも螺旋の中だ。



ひとりきりの部屋の中、停滞した空気の中をゆるゆると煙草の煙がうねる。外では雨が降っている。灰色に塗り潰された窓の外と対比するかのように、この部屋の中は白く濁っている。そういえば随分長いこと換気もしていなかったな、とぼんやり思う。けれど思うだけだ。俺の脳味噌は最近、めっきり考えることをしなくなっている。停止した頭の中で、繰り返すようにあの日の情景が流れている。さよなら。さよならさよならさよなら。俺の心はあの日のままだ。

さよなら。ひとりつぶやいてみる。さよならなんて、俺は今まで幾度と無く繰り返して来たはずだった。人生出会った数だけ別れがあるのだ。たった十数年とはいえ、俺だって人並みに出会いと別れを繰り返して来た。なのに。



その日も雨が降っていた。それは突然に訪れた。懐かしい顔だった。俺を置いて行った奴だ。俺と長太郎が付き合う、その切欠をつくった奴だ。
「しし、ど・・・?」奴は呆然と立ち尽くしたままそう言った。自然、俺の口元に笑みが上る。
「ひさしぶりだな。なに、おまえもう帰ってたの。留学は?」
「・・・終わった」また戻るかもしれねえが。そう言って奴はこちらを見た。俺はどうでもよさそうなふりで「ふうん」とつぶやく。

「わりいな、座る場所もなくてよ。適当に座って」
「おまえ、何があったんだ?」俺の言葉を無視して奴はそう言った。俺はすうと奴のほうを見ながら、ひそかに心に薄い膜を張る。こいつに捨てられたあと、身に付けた技だった。
「何もねえよ」
「何も、ねえことはねえだろ」
「ねえんだよ、何も」
「おまえそんなんが通ると思ってんのか。そんな程度の低い嘘、インサイトを使うまでもねえぜ」
「そうかよ」
「そうだよ」
「ならその万能なインサイト様でもって、俺の心でもなんでも覗いたらどうですか」
「ばか言うな。俺様は人様の心勝手に覗くなんて下世話なマネはしねーんだよ」
「すばらしい心意気ですね。ならほっとけよ。関係ねえだろ」
関係、ねえだろ。心の中でもう一度つぶやく。関係ない。そう、関係ねえんだ、おまえには。おまえはあの日俺を捨てた。それが何を、何をいまさら。

あの頃、傷付いた俺をすくってくれたのは長太郎だった。おまえに置いて行かれた痛みを癒してくれたのは長太郎だった。すべてに裏切られたような気分になって、荒れていた俺の傍に居てくれたのは長太郎だった。おまえじゃない。おまえではない。関係ない、いまさら。関わることなど出来ない。俺は今長太郎さえ失ったのに。



煙草の灰が落ちる。それにふいに引き戻されて、俺は跡部の顔を見る。奴は黙り込んで、下を向いていた。俺はそんな奴に、「帰れよ」と告げるべく口をひらいた。しかし急に顔を上げた奴に、言おうとした言葉が吐けなくなる。奴は俺が今まで見たことのないような顔でこちらを見ていた。それは、たぶん、痛みをこらえる顔だ。長太郎があの日、踏み切りの向こうで浮かべたのと同じ顔だ。それは、ひとを想う顔だ。胸の奥がちり、と痛む。

「ししど」跡部がちいさく俺の名を呼ぶ。「わるかった」そのくちびるから漏れたのは謝罪の言葉だった。何かをこらえるような、つらそうな表情のまま、跡部は言う。「悪かった、悪い、ししど、」悪い。次第に涙の混ざるような声になる奴に、俺の停止したはずの心が動揺する。なにを、そんなにあやまって。だっていまさらだろ。いまさら。そんな。

「ししど、」もはや涙を隠すこともないようすで跡部は俺の名を呼ぶ。すうと頬に手のひらを添えてくる。「すきだ」その言葉に、俺がぱちりとまばたきをすると、奴の瞳から涙がひとすじこぼれた。



夕日、踏み切り、校舎、また、さよなら。さよなら。あの日あの場所あの言葉が、俺の頭をぐるぐる回る。あの日の長太郎があの日の跡部とだぶる。「さよならしましょう」と言った長太郎が、「またな」と言った跡部に変わる。あの日跡部が言った「またな」は「さよなら」だった。なにげないふりで、おまえは俺の前を去った。なのに、なんで。なんで、その言葉を。だって、そんなの。そんな言葉は。



「いまさら、だろ」



「そうだな、いまさらだ」そう言って跡部は涙に濡れた顔で、くしゃりとわらった。「でも、すきだ。これだけは言わせろ。すきだったんだ。前からずっと。ずっとずっと、初めて会った時から。すきだった。ずっとすきだった。すきなんだ」今も。「なあ、しってたか?俺は、・・鳳がおまえをすきだったなんてこと、ずっと昔からしってた」でもそれも、いまさらだな。そう言って跡部はわらう。涙がもうひとすじ、すうと頬を流れた。

「じゃあな。今度こそ、お別れだ」跡部はそう言って俺に背を向ける。あの日とおなじ、すらりと伸びた背中だ。「またな」その声にもう涙はない。ひらりと手を振って、跡部は俺の部屋から出て行った。扉が閉まる。俺は、その扉を呆然と見つめていた。



俺の見つめる瞳から、涙が頬を伝って落ちた。次から次へと、頬を伝って涙が落ちる。どんどんどんどん、こぼれるように涙が落ちる。そして俺はようやく理解した。失ったものはもう戻らないのだということを。涙が落ちる。まるで俺のようだ。こうしてどんどん落ちていって、最後にはからっぽになる。ぜんぶ失くして、けれどもその先はどうなるんだろう。失くし終わったらそこで終わりなのか。失くしたあとがあるのか。俺は濡れた瞳で扉を見つめながら、まだ失くしていないものについて考えていた。



ここで、引き篭る宍戸の話は一応一区切りというか、おしまいです。最後までお付き合い下さった方、本当にありがとうございました!続き物など書くのは初めてだったのできっと見苦しい点が多々あったのではないかと思いますが、書き手としてはとても楽しく書くことが出来ました。それもこれも読んで下さった皆様のおかげです^^ありがとう!そしてししどごめんね!だいすきだよ!^○^

あ、そうそう、じつはこっそりきまぐれにカウンターを付けてから、今日で1週間になるんですが、なんと昨日の時点で驚きの180カウントでした!ちょ、誰、見てるの!そんな見て貰えてると思わなかったんでむしろ怖いんですけど!え、大丈夫、わたし変なこと書いてないよね、大丈夫だよね!?とにもかくにもありがとうございます!わたしの生きる力です!これからもこんな芦野と宍戸をどうぞよろしくお願い致しますね!^▽^

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俺たちの旅は、まだまだつづく!


※跡部と宍戸(と鳳)
※引き篭る宍戸の話 跡部視点です



久しぶりに降り立つ日本の街は酷い湿気に包まれていた。梅雨だ。相変わらずのじめじめとした空気に何故かほっとする。どんよりとした空は今にも泣き出しそうで、俺の心を粟立てる。そうだ、急がなければ。俺には会いたい奴がいる。

俺が日本を発ったのは1年前の冬、雪のちらつく寒い日だった。生まれ育ったイギリスへいつか戻る、それは前々から決まっていたことだ。すべて親の都合ではあったが、俺には特に文句もなかった。俺は跡部家の嫡子、跡部景吾だ。俺の人生は家のためにある。それが跡部家嫡子としての俺の役割りだ。俺はそのことに誇りを持っていたし、家のためになることさえすれば他は俺の好きに出来る。俺に不満のあるはずもなかった。そして俺は高校2年の冬、かねてからの予定通りイギリスへと旅立ったのだ。

それを宍戸には言わずひそやかに行うことにしたのは、あいつにだけは知られたくないと思ったからだった。言いたくない、言えないと思った。イギリスへ行く、ただそれだけのことなのに、俺はそれを宍戸にだけは言うことが出来なかった。勿論俺が直接言わなかったとなればあいつが酷く憤るだろうことは予想出来た。次に会えたとしても、口は聞いて貰えないほどに、機嫌を損ねるだろうことも。けれど俺は言わなかった。あの日校門の前で宍戸が言った「また明日な」に当たり前のように「また明日」と答えて俺は、その足でイギリスへと発った。

イギリスで勉学に励みながら、俺は一時もあいつを忘れることはなかった。俺はいつだって、あいつと交わしたすべてを鮮やかに想うことが出来た。あいつと初めて試合をした日のこと、夕暮れの部室で初めて交わした言葉。触れたくちびる、その温度、土と汗の混じった匂い。一度だけ言った「好きだ」の言葉、それに返った「俺も」のひとこと。そして俺が、最後だからとあいつに吐いたひとつの嘘。全部全部、欠けることなく覚えている。

会いたかった。ただもう一度会いたかった。あいつの笑顔を見たかった。俺のしたことを謝るためではない。あの頃どれほどおまえを好きだったかを伝えるためでも、今も好きだと伝えるためでもない。ただ宍戸に会いたかった。もしかしたらおまえは、今べつの誰かを愛しているのかもしれない。それでもいい。ただ幸せな姿を見たい。あの頃と変わらぬ笑顔を見たい。ただそれだけだ。



そして俺は、その部屋へ踏み入り絶句した。



その部屋の空気は、生きているものなどひとつもないかのように停滞していた。唯一動くのはゆるゆるとうねる煙草の煙だけだ。その煙の伸びる先、床と一体になったかのようにそれはいた。それはゆるゆるとこちらを見上げたと思うと、「・・・あ・・・と、べ・・・?」と言った。

「しし、ど・・・」俺はその変わりように、それ以上言葉を続けられずまたも絶句した。それは最早、生きているとはいえぬような有様だった。その瞳は開いてはいるが何も映してはいない。どこかここではないところを見ているようだった。ここに来る前、宍戸は今どうしているかと萩ノ介に電話したとき、どうにも歯切れが悪かったのが気にかかっていたのだが、俺はここで初めてそのわけを了解した。これは、(酷い)いったい、何が。どうして、こんな。

部屋の入り口のところで何も言えず立ちすくむ俺に、宍戸は薄く笑って、「ひさしぶりだな」と言った。
「なに、おまえもう帰ってたの。留学は?」
「・・・終わった」また戻るかもしれねえが。そう言って俺は宍戸を見た。本当は、おまえに会いたくて急いで帰ってきたんだと言うつもりでいた。だが、この宍戸には言えない。こんな、(手負いの犬みてえなおまえには)宍戸はどうでもよさそうに「ふうん」と言うと、「わりいな、ひでえだろ。座る場所もなくてよ。適当に座って」と俺のほうを見もせずに言った。俺はそれを無視して、立ったまま言った。「おまえ、何があったんだ?」宍戸はすいと俺のほうに目を向けたかと思うと、またふいとそらして「何もねえよ」と言った。

「何も、ねえことはねえだろ」
「ねえんだよ、何も」
「おまえそんなんが通ると思ってんのか。そんな程度の低い嘘、インサイトを使うまでもねえぜ」
「そうかよ」
「そうだよ」
「ならその万能なインサイト様をもって、俺の心でもなんでも覗いたらどうですか」
「ばか言うな。俺様は人様の心勝手に覗くなんて下世話なマネはしねーんだよ」
「すばらしい心意気ですね。ならほっとけよ」関係、ねえだろ。そう言って宍戸はうつむいた。煙草の灰が落ちる。それがやけに目の端に鮮やかにうつって、俺は宍戸から目を離せなくなる。
関係、ない。関係ないのか。俺とは。おまえがこんなにも惨めな姿になっている原因は俺にない。関われない。こんなにも近くにいるのに。あの頃と同じように、手を伸ばせば触れる距離にいるのに、俺たちは酷く遠いところにいる。なにか、とてつもなく熱い波が、俺の心を襲う。

おまえが今、べつの誰かを愛していてもいい。俺はそう思っているつもりでいたが、どうやら違ったらしい。宍戸の指先から落ちる煙草の灰を見ながら、俺はそのことに気付いた。いや、もし宍戸が笑っていたら話はべつだったかもしれない。宍戸がしあわせそうにしていたなら。そうしたら俺は、こんな気持ちにはならなかったのかもしれない。けれど今目の前にいる宍戸は、酷くやつれた姿で、ここではないどこかを見ている。もどらないなにかを見ている。俺ではない、誰かを見ている。俺はあの日の俺にはじめて後悔を覚え、離れてしまった自分を悔いた。届かない距離が俺を追い込む。今でも好きだ。たしかな温度で。なのに今、俺は宍戸に放つべき言葉がわからない。



中途半端っ!
~次号予告~果たして跡部の気持ちは報われるのか、そして宍戸はヒッキーを脱出出来るのか!!次号(たぶん)最終回!みんな、ぜったい見ろよな!^○^

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プロフィール

HN:
芦野汎音
性別:
女性
趣味:
絵描く 歌うたう 本読む ネットサ~フィン(^ω^)
自己紹介:
京都在住、おたく どうじんがわたしの生き甲斐!←
ぎんたま、ばさら、おおふりを愛しています。テニヌの王子様、デュラララ!!に夢中です。愛、溢れ出ちゃう!



※解離性障害(多重人格・不随意運動ほか)を患っています。そのため更新も一人ではなく数人でおこなうことがあるかもしれません。ご了解下さいませ。

※ここに置いてある小説もどきみたいなんは、特に表記のない場合ぜんぶテニヌの王子様二次です。

※CPに節操はありません!お気をつけ下さい!

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