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callingcalling


※DRRR!!
※静雄と臨也
※いろいろ適当許して下さい



奴はときどき、きまぐれに俺の電話を鳴らす。
どこで俺の番号をしったのかはしらない。情報屋である奴に、そんな質問はそもそも無意味であろう。かならず非通知設定でかかってくるその電話は、たとえば仕事終わりでくたくたに疲れきっているときに、はたまたまだ日も昇らぬ夜更けに、たいした必要性もなくふいに鳴る。いつからはじまったものかもうわからないが、この電話はもう長いこと俺の生活と寄り添っていて、日常と呼んでも差し支えないものになっていた。

今日もまた、もう寝ようかとちいさなテレビの電源を落としたとき、非通知で電話がかかった。もしもし、の「も」も言わないうちに「やあシズちゃんこんばんは。元気?」とやけにハイテンションな声が流れ出す。「こんばんは、いざやくん。てめえから電話かかってくるまでは元気だったよ」と返すと、くふふふ、と電話の向こうで笑うのが聞こえた。きしょくわりい。「ちょっと付き合ってよ」と言うから「もう付き合ってんだろ」と答えた。「そうだったね」と言ってまた笑う奴は明らかにちょっとおかしい。俺に電話をかけてくるときはいつもこうだ。変に元気で、まるでなにかを取り繕っているみたいだ。なにかを隠されているようで俺はそれが気に喰わない。

そんな俺の気をしってかしらずか、臨也は今日の昼間に放送していたテレビの話だとか、うちの弟の熱愛報道の話だとかを楽しげにしている。俺が昼間は家にいないことや、臨也がうちの弟に近づくことを徹底的に避けていることなんかをしっての話題だ。つくづく性根が腐っているとしか思えない。ひとしきりあいつがしゃべりつくして、沈黙が訪れたとき、俺はなんとなく聞いてみた。
「なあ、臨也」
「なに?」
「おまえさ、」
「うん」
「なんかあったのか?」
電話の向こうで一瞬、息を呑む音がした。
「なんで?」
「なんとなく」
「はっ、なんもないよ、あるわけないだろ?大体もしなにかあったとして、それをシズちゃんに悟らせるようなドジ、俺が踏むわけないじゃんか。ばかにするのもいいかげんにして欲しいなァ」
ばかにしてんのはそっちだろと言いたかったが言わないでおいた。なにか、俺には触れられないものが、そこにはあるような気がした。




その電話から2ヶ月、俺は普段どおりにとつとつと日々を暮らしていた。仕事じゃ相変わらずキレてトムさんに迷惑かけっぱなしだったけどトムさんは「まあしゃあねえって」のひとことで俺を許してくれつづけていた。俺はできるだけ恩返しをできたらとキレないよう努力して仕事に励んだし、なかなかに忙しい毎日が続いていた。数少ない友人であるセルティとも長いこと会えてないくらいだった。だから、そのことを思い出したのは本当にたまたまだった。そういえば長ェことあいつと会ってねえな、とふと思っただけのことだ。なんだかんだで犬猿の仲と池袋中に言われてしまうような関係だ、互いに互いが大嫌いではあるものの、2週間以上まったく顔を見ないということは今までなかった。べつにわざわざ会ったりするわけではないが(それこそ身の毛がよだつ)街中で見かけるということはかなりの頻度であった。だからこそまったく連絡手段などがないにもかかわらず(俺のほうには、だが)、ずっと続いているともいえた。それがここ数週間まったくない。おかしい、俺は直感で思った。



「へ?臨也?そういえば全然連絡ない・・・かも?でもそれがどうしたの?」
旧友である変態、岸谷新羅の元を訪れ臨也から連絡はないかと聞くと、奴は目をしろくろさせてそう答えた。
「めずらしいね。君が臨也のことを気にかけるなんて。まさに吃驚仰天の境地だよ」
「べつに気にかけてるわけじゃねぇ」
「まったまた~そういうところ、嫌いじゃないけどね。静雄はちょっとは素直になったほうがいい。そもそも人に気持ちが伝わらないほうなんだから、その上ツン属性じゃ望みは低いよ。好きなら好きって言わないと」
「てめえぶち殺されたいのか」
「すみませんごめんなさいちょっと調子に乗りました」
一瞬で床に這いつくばって土下座する新羅を視界の端に追いやって、俺は考えに潜り込む。

新羅にも連絡がないとすると本当に何かあったのか。いや、ただ単に家に引きこもってまた変なこと企んでるだけかもしれない。あいつならあり得ることだ。半引きこもりみたいなもんだし。そもそも俺があいつの心配をしてやるというのもおかしな話だ。なんで大嫌いな奴の心配なんかしてんだ。どっかで野垂れ死んでくれてたらそんなありがたい話はないだろ。しかし、最後に電話がかかってきた夜の、あの妙なハイテンションが気にかかる。あれはなにかを隠してた。隠していたんだ。間違いない。
「・・・くせぇ」
「えっなに?くさい?それは俺が?どうしようそんな、俺はでき得る限りで清潔にしてるはずなのに!くさかったりしたらセルティに嫌われちゃうよ!どうしようああセルティセルティセルティセルティーイ!」
「うるせえ!」
騒ぐ新羅の顔を思い切りつかんで口をふさぐと、
「ふぉうぇんふぁふぁいふぇもふぉんとにふふぁいならろこらへんふぁふふぁいのふぁふゃんとふぃってふぉふぃふぉごふぉご」みたいなわけのわからないことをもごもご言った。心底うるさい。

「新羅、あいつなんかもめたとかそういうことは言ったりしてなかったか」
口をふさいでいた手を離してそう問うと、はあはあとわざとらしく息を整えたあとで眼鏡をかけなおし新羅はこう言った。
「いいや?大体あいつの場合もめごとなんかしょっちゅうだろ。いちばん目立ってるのは君とのことだ。それ以外にもたくさんもめごと抱えてるだろうねえ。あいつもなかなか厭な男だから」
「んなことてめえに言われなくてもしってんだよ。あー・・・」
「なに?そんなに静雄が悩んでるなんてめずらしいね。しかも臨也に関することだなんて、僕はなんと言ったらいいか、この分だと片目どころか両目が飛び出して目玉親父になりそうだよ」
「てめえもなかなか厭な男だよな。俺だってんなことわかってんだよ。でも・・・」
「でも?」
「・・・いや。わかんねえ。・・・あー・・・あああ、むしゃくしゃする。ノミ蟲の野郎、ぶん殴りてぇ」
「なんだかねえ。そんなに気になるんなら訪ねればいいんじゃないの、直接」
「直接?」
「ああ、君は臨也の家をしらないか。いいよ、教えてあげる。たしか新居のおしらせが来てたはずだからね」
そして俺は新羅にもらったメモを手に、新宿へやってきた。ビル風に吹かれながら顔を上げる。目の前にそびえたつ高級そうなマンション、それが臨也の住居のはずだった。



扉を前にして、俺はそれを蹴り倒そうかどうか少し悩んだ。しかしさすがにはじめて訪ねるのにそれは常識を欠いた行動かと思い直しておとなしくチャイムを鳴らす。返事はなかった。そう、とノブに手をかけるとそれはあっけなく開いた。すこしおどろいてしばらくのあいだ扉を見つめる。
「・・・臨也、いんのか?」声をかけながら玄関に足を踏み入れる。むわ、と湿った空気が俺を襲う。中は淀んでいた。しばらく人が入っていないような様子だ。照明などもひとつもついておらずまっくらだった。「・・・臨也?」しんと静まり返った部屋を見渡して俺は言葉を失った。部屋はむちゃくちゃに荒らされていた。まともなものがほとんどない。「臨也、いるか?」もう一度呼びかけてみるも返事はない。ひっくりかえった机のすぐそばに高級そうな灰皿が落ちていた。その中に入っていたと思われる吸殻が床に無数に散らばっている。臨也は煙草を吸わない。何人もの人間がここで煙草を吸ったと考えるのが妥当だった。

そのまま扉まで引き返したところでカンと音がした。外からだった。ばっとそちらへ顔を向けると驚いた顔をした臨也が肩を押さえて立っていた。着ている服は部屋と同じくめちゃくちゃで、顔は傷だらけだった。口元には血がにじんでいる。足は、なぜかはだしだった。
臨也は、すぐに顔を引き締めると、瞬間身をひるがえした。
エレベーターは遅いと判断したのか、階の端にある非常階段を猛然と走り降りていく。しかしその足は不自由そうに引きずられていた。俺もそのあとを追いかける。下まで降りたところで、その姿を見失った。しかし俺はいままでの経験上、こういうとき臨也はそう遠くへ行っていないことをしっていた。遠くへ行ったと思わせておいて近くに身を隠しているのだ。その場所はすぐにわかった。俺がそちらへ近づいていくとそれを察した臨也はどこにそんな力が残っているのか信じられない速さで路地裏へと走り込んで行った。そのまま後を追おうとしたとき、スラックスに入れた携帯から着メロが流れた。津軽海峡冬景色。反射で通話ボタンを押す。
「・・・来ないで」耳に掠れた、しかし聞きなれた声が聞こえた。
「臨也?」
「来ないで、ぜったい来ちゃダメだよ。もし来たら俺はシズちゃんを抹殺する」
物騒なセリフ吐いてんじゃねえよできもしないくせに、浮かんだ言葉は喉の奥に押し込んで、俺は足を止めたまま臨也が消えた路地を見つめる。雰囲気からして行き止まりだろう。よりにもよってそんなところに逃げ込むなんて。臨也らしくもない。先ほど見た驚愕に見開かれた目とぼろぼろの服、そして傷だらけの顔を思い出す。
「・・・なにがあったんだ」
「・・・べつにィ?シズちゃんにはなんら関係のない話だよ」
「関係ねえはねえだろ」
「関係ないじゃん」
「・・・・・・」
「・・・ちょっとミスっちゃってさ。それだけだよ」
「それでなんで部屋があんなことになんだよ」
「やだなぁシズちゃん、不法侵入だよ」
「うるせえ。どんなミスしたらあんなことになんだって聞いてんだよ」
「ちょっとしたミスをしたら、だよ」
「うぜぇ!」
ちがう。俺は、俺はこんなことが言いたいんじゃなくて、
「家、帰ってなかったろ」
「・・・・・・」
「なにがあった、・・・いやちがう、だれに、」
なぜ俺はこんなにも苛立っている。俺は、いったいなにが聞きたい。わざわざ新宿くんだりまで来て、臨也に、なにを。臨也がけっして俺に真実など話すわけもないとわかっているくせに。

「・・・はは」臨也が乾いた笑い声を上げた。
「はは、はははは、あはは、・・・シズちゃんさ、いったい俺になにを聞きたいの」なにを、しりたいの。臨也の口唇が電話越しに低く呟く。
「俺がここで、こいびとに遊ばれてぽいされて手下のひとにリンカンされたりしました、って言ったら満足なの?シズちゃんさ、・・・なんなの?」
掠れた声が強い調子になって、折れた。ぽきりと、音がしたような気がした。
「俺になにがあったってシズちゃんなんかに関係ないだろ!そうさ、シズちゃんになんかこれっぽっちも関係ない。なのになに?まさか弱味でも握ろうってわけ?」
「俺は・・・」
「なら教えてやるよ、こんなの弱味でもなんでもない。大体シズちゃんに情報をあやつる能力があるとはとても思えないしね。・・・ははは、そうさ、俺には恋人がいたよ。わざわざD/Vまで奮ってくれるやさしいやさしい恋人がね。それで捨てられて部下のひとたちに乱暴されて監禁されそうになったから、逃げてきた。・・・はは、すごく刺激的な体験だったよ。俺はすごい果報者だ。いままで情報としてしかしらなかったことを実際に体験できたんだからねえ・・・実際は想像をはるかに超える。・・・はは、これだから人間はたまらない!
俺は人間を愛してやまないよ。あは、あははははは、ははははははは!」
「臨也!」
もういい、そう低く叫ぶと受話器の向こうでふ、と臨也が口をつぐむのを感じた。
「は、・・・軽蔑した?」
「・・・いまさらだろうが」
「・・・シズちゃん」好きだよ、息にまぎらせるようにして臨也がささやく。俺は、その瞬間、呼吸が止まるのを感じた。胸に怒りがこみあげて、すぐにいっぱいの悲しみに変わっていく。そんな嘘、俺にだってわかるようなそんな薄っぺらい嘘を。吐かなきゃならねえほどいまおまえは追い詰められてるとでも言うのか。いつだって、なにがあったって余裕だと言いたげなむかつく笑みを浮かべているくせに。いまおまえはその笑みさえ。

「・・・嘘吐いてんじゃねえよ」
「うそじゃない、うそじゃないよ」すき、シズちゃん、すき、すきだよ、あいしてる。臨也の声が受話器越しに俺に降りかかる。
「・・・臨也」
「すき」
「・・・臨也ァ」
「すきだよ、シズちゃん」
「臨也、」臨也、臨也、臨也臨也臨也臨也臨也臨也、イザヤ、イザヤ、イザヤ、イザヤ、




すき、すき、すき、受話器の向こうで掠れる声に縋りつく。
そんなものが聞きたかったわけじゃないのに、ただ、いま俺は、そのくちびるから嘘が剥がれ落ちていくのを、ただひたすらに待っている。




こないだ「に/け/つ/っ!」って番組で電話の話をじゅにあさんがしていたので書いてみました。わたし自身は電話にがてすぎて音が鳴るだけで失神します(←おおげさ^ω^)臨也と静雄が電話でなかよくおしゃべりなんかするはずないとも思ったんですけど、でもまだありうる範囲ですよね。・・・ね(^^)ふたりで遊園地デートとかよりはね!それにしても臨也と静雄はどーしてこーも書きにくいのか・・・愛が足りないんですかね。もっと、いちゃつかせたいのだ!精進します(・ω・´)キリッ
 

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芦野汎音
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女性
趣味:
絵描く 歌うたう 本読む ネットサ~フィン(^ω^)
自己紹介:
京都在住、おたく どうじんがわたしの生き甲斐!←
ぎんたま、ばさら、おおふりを愛しています。テニヌの王子様、デュラララ!!に夢中です。愛、溢れ出ちゃう!



※解離性障害(多重人格・不随意運動ほか)を患っています。そのため更新も一人ではなく数人でおこなうことがあるかもしれません。ご了解下さいませ。

※ここに置いてある小説もどきみたいなんは、特に表記のない場合ぜんぶテニヌの王子様二次です。

※CPに節操はありません!お気をつけ下さい!

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